野党+市民共闘が拓いてきた道、これからの道

山口二郎

やまぐち・じろう | 

1958年まれ、行政学、日本政治論、法政大学教授。「立憲デモクラシーの会」共同代表)


1人区10人の勝利

 

こんどの参院選挙は、とにもかくにも改憲勢力3分の2を阻止したところに大きな意味があると思っています。もし安倍政権側が3分の2以上を占めていれば、これを国民の「総意」として秋の臨時国会以降、憲法「改正」へひた走り、政治というか日本社会全体の雰囲気は、いまとまったく違っていたことでしょう。

2015年以来の安保法制反対のたたかいが、土俵際でかろうじて踏みとどまったという感じがしています。

この最大の要因は、1人区での10人の当選です。もし、4人でも5人でも逆の結果だったらと思うと、肌寒い思いがします。投票日1週間前の予想では、野党側は4、5人くらいとされていましたから、野党と市民の共闘が最終盤、ほんとに力を尽くし、逆転したわけです。3年前とほぼ同じとはいえ、今回はほとんど新人で、相手は自民党のいわばベテランや副大臣経験者など実力者で、しかも安倍首相や菅官房長官、それに小泉進次郎ら「集票力」のある人気者が何度も乗り込んでてこ入れしたところです。

予想以上の大健闘といっていいかと思います。

東北地方や新潟、長野などでは農業政策、加えて秋田ではイージス・アショアの配備、新潟では原発問題など、安倍政治の矛盾をつよく感じる人たちが抵抗の意思をしめしましたが、野党共闘はその大事な受け皿になったわけです。これは重要なことだと思います。

今回、野党と市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)は13項目の政策合意をして選挙に臨みました。3年前は安保法制の廃止が中心で、政策の幅もほとんどありませんでしたが、13項目は安倍政治全般にわたる対決点、批判となっています。これに、共産党を含むすべての野党が合意をして国政選挙をたたかったことは、とても重要なことです。今後、連合政権をめざすうえで出発点になると私は思います。

それとともに、投票率が50%を切ったことも重視しないといけません。

安倍政権を支えているのは、政治への無関心とあきらめです。投票率に表れた、有権者の半数以上の人がいまのままでもいいと思っている。消極的な現状維持といっていいかと思いますが、この人たちにいかに関心を持ってもらうかは重要な課題です。

安倍政治のやり方はいろいろ特徴がありますが、大きな一つは、国民を政治から遠ざけることです。隠す、ごまかす、ウソをつくことでほんとうのことを分からなくしてしまう。もう一つは、敵をつくり煽ることです。日韓関係が典型です。冷静であるべきメディアがこれに乗って大騒ぎをしていますが、みっともない光景です。これが政権運営なのですから、まったく情けないことです。

目的地は違っても中間点まではいっしょに

 

共闘にとって大事なことは、方向性の共有です。

政党も市民運動も、それぞれに目指す目標があります。違っていて当然なのです。しかし、ゴールは違っていても中間点まではいっしょに行こう、ということが共闘の意思でなければなりません。たとえば、日本の安全保障の問題でいっても、「専守防衛」という従来の線にもどせばいいという人もいれば、日米安保はなくすべき、自衛隊は解散、という人もいる。しかしそうであっても、安倍政権がやった集団的自衛権の行使を容認する、そのための安保法はいったん白紙にもどす、というところまではいっしょに行ける、それを真摯に追求するということなのです。

原発問題でも、たしかに3・11の福島原発の大事故があり、いまもその影響を大きく受けていますから、原発ゼロ、という主張は当然出てきます。しかし、それをつねに前面に出さないといけないのかというと、必ずしもそうではないと私は思います。現実的に再稼働できない仕組みを作り、気がついたら廃炉に進んでいたというようにすればいいわけですよ。

自分たちは違う目標だからいっしょにやれない、と言いだしたら共闘は成立しません。

ですから、私たちはもっと良い意味での政治的な知恵が必要だと思います。そして、そういう議論の仕方が身につくと、私たちはもっと強くなれるのではないでしょうか。野党と市民の共闘は、そういう道をああでもないこうでもないと手探りで進んでいるような気がします。

イデオロギーを振りかざして突き進むというのではなくて、もっと政治的に成熟するということでしょうね。その意味では、共産党はずいぶん変わったように思います。党の思想でもある綱領と現実政策を区別しています。そのことが徐々に理解されてきているように思えます。市民の側も、共産党をふくめてみんなでいっしょにやるというのが、あたりまえの政治風景になっています。参院選挙のあと埼玉県知事選挙がありましたが、ここでは、共産党は安倍政権べったりの自民党県政の復活は許さないということで、野党共闘候補の自主支援にまわりました。

こういう対応はとても大事だと思いますし、こういう経験を積み重ねていくことです。いまの野党共闘は、安倍政治をまともな政治にもどしていくところにあるわけで、安保・外交政策をいうなら、自民党の保守本流が従来保持してきた線にまでとりあえずもどすということです。そういう点では、穏健な保守をふくめたさらにひろい共闘が可能ですし、また必要です。埼玉県知事選挙はその意味でも大事な政治経験でした。

現在の小選挙区制という選挙制度でたたかう以上、自公に対して立憲野党+穏健保守、そして、あとでも述べますが今回、山本太郎さんが代表となって旗揚げしたれいわ新選組と彼らに支持を寄せた若者たち、こういうはばひろい共同戦線をつくって、ほんとうに挑むかたちをつくらなくてはならないでしょうね。

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