対米従属レジームからの脱却を

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白井 聰さん(政治学)に聞く

 

――総選挙は、自民党が改選前の284議席を保持 し、公明は5議席減らして29でしたが、合わせて313議席と安倍政権が圧勝した結果となりました。どういう点を注目されましたか。

 

白井 自民党はもう少し減らすのではないかと思っていました。が、民進党の事実上の解体、小池新党「希望」への合流さわぎ、さらに、小池百合子氏による民進内のリベラル派の人たちへの「排除」の試みがあり、立憲民主党が旗揚げするという一連の事態に救われた格好になりました。自民党内では安倍さんの交代を望む声もあったようでしたが、その理由がなくなってしまった、それほどの勝利でした。これが第一の点です。

 

――支持率を減らしながらの選挙なのに勝つという、不思議な現象でした。

 

白井 奇妙ですよね。平均的な有権者の感じとしては、自民党政治は続いてほしいが安倍さんはもうイヤだ、というものではなかったでしょうか。しかしそれはかなわず、自民党支持は安倍支持になってしまいました。

注目しているもう一つは、立憲民主党の誕生です。

『サンデー毎日』(10月29日号、「白井聡が核心を語り尽くす

『まともな対立構図がやっと形成される!』」)にも書いたのですが、小池新党、「希望の党」は何だったのかということです。ひと言でいえば、もう一つの自民党です。ふり返ってみますと、民主党はまず看板、党名を民進党に変え、党首選挙をおこなって代表を変えました。しかし、中身が変わるわけではないので、それなら、党そのものを変えようと小池新党に「合流」し、その際、党内のリベラル派と呼ばれる人たちを排除することにしました。それによって、政党そのものの変化をし遂げようとしたわけです。

衆院の解散、小池新党の立ち上げがいわれた当初は、政権交代を目標に掲げていましたが、民進党が小池新党に合流する条件に、①憲法改正への賛同、②「現実的な外交・安全保障政策」への賛同(つまり、新安保法制の容認)があげられたとき、新党結成のねらいが見えてきました。あげくに、自民との連立の可能性をいいだし、実際の選挙にあたっては、立憲が候補者を立てたところには対立候補を立て、公明党が立ったところには立てない、とあけすけで、要するに民進党内のリベラル派の政治生命を奪うということが第一目標になってきたわけです。

これが何を意味しているかといいますと、私は、たんに新安保法制に対する態度――合憲か違憲かという法律解釈のレベルの問題ではなくて、アメリカの軍事戦略にどこまで付き合うのかという、対米従属の問題が横たわっていると見ます。

民進党はご承知のように、新安保法制に反対する運動の大衆的なひろがりの中で、党としてこれに反対する態度をとりました。公党の中で新安保法制に具体化される日米安保の強化・拡大に最も強力に反対している共産党と手を組む方向に進みました。新安保法制は軍事的なものとしてあらわれていますが、これは一つの橋頭堡で、ここからさらに経済、外交などあらゆる面に日米同盟という名の従属関係が深まり、ひろがっていきつつあることは明らかです。新安保法に反対するということは、この更なる従属強化に反対するということにつながらざるを得ません。

民進党はもともと雑居性というか二面性がありました。それが新安保法制に反対する方へと舵を切ったことで、矛盾が大きくなっていきました。前原前代表以下、民進党の主流派は、安全保障政策においては自民党に近く、場合によっては自民党以上に対米従属的です。前原さんの本心は、あるいは新安保法に反対したくなかったのかもしれません。そこで、小池新党との合流を機会に、民進党内のリベラル派とよばれる、新安保法制に確信的に反対した議員たちの切り落としにかかりました。そうやって、民進党を主流派のみに純化することで二大政党制を再構築しようとしたわけです。

しかしこれは、自民党と第二自民党によってのみ議会を構成しようというもので、アメリカのご機嫌取り競争をしようというものです。政権交代しても混乱のないようにするといいますが、私にいわせれば、それは〝永続敗戦レジーム〟、つまり対米従属レジーム(体制)のバージョンアップでしかありません。

 

――「永続敗戦」というのは、先のアジア・太平洋戦争で日本は敗北したにもかかわらず、中国やアジア諸国への敗戦を認めないという態度をとるためにアメリカに従属して戦後社会を形成するという「永続敗戦」の道を選んだ、という意味ですね。

 

白井 そうです。前原さんの思惑は、8割方うまくいくかに見えましたが、見事に失敗しました。最後に来て、やはりリベラルとはいっしょにやれないと「排除」し、枝野氏などが立憲民主党を立ちあげることになったわけです。私は、これで本来の対立構図ができた、と思いました。永続敗戦レジームの護持勢力vs永続敗戦レジームへの批判勢力、という構図です。

すでに沖縄ではこれが明確な形になってたたかいがつづけられています。仲井眞知事が東京の手先になって変質したとき、もともと沖縄の自民党を引っ張ってきた翁長(雄志)さんから共産党までが一体となって、〝オール沖縄〟とよばれる、いわば「沖縄党」がつくられて、永続敗戦レジームに抵抗しています。私は、同じことが本土でも起きないかと思ってきましたので、立憲民主党という〝核〟が出来たことは一歩前進だと思っています。

ただし、問題はこの党をになっていく人たちにいま述べたような意識があるか、ということだと思います。枝野(幸男)代表はいまのところ、自分はいわゆる護憲派ではない、いいように変わるなら憲法は変えてもいいと思っている、しかし、集団的自衛権の行使を認めて、9条に第3項を付け加えるのは反対である、日本は専守防衛に戻らないといけない、と明確に述べています。それを貫いていくなら、対米従属には反対ということになります。

また、日米地位協定の問題もあります。先ごろも、沖縄で米軍ヘリコプターの事故がありました。住居のすぐそばをわが物顔で飛行し、事故を起こしても日本側は十分な調査も行えない。何でこんな不利で理不尽な協定があるのか。ここにも異常な対米従属の問題があります。そこへ行き当たらざるをえないのです。北朝鮮問題でもそうです。なぜ日本が「北」のミサイル、核攻撃の直接の危険にさらされないといけないのか。軍事的な日米一心同体状況を解消しないといけませんし、何より朝鮮戦争を平和的に終結させるように、日本はアメリカにも「北」にも働きかけないといけない。そういう外交が安倍さんのもとで出来るかというと、出来ないのです。

トランプ米大統領が来日します。TPPを自ら壊して自国ファーストをいったトランプ氏のことですから、FTA(自由貿易協定)によって多国籍資本が富を吸い上げる方向を迫ってくるでしょうが、これに安倍首相はどう対応するでしょうか。抵抗すらしないのではないかと思います。

ことほどさように、軍事だけでなく経済も外交も全部そこ(対米従属)に行きつきます。立憲民主党がほんとうの批判勢力であろうとするなら、この対米従属の問題への姿勢を鮮明にしないといけません。日米関係を健全化する――立憲民主党にそのことへの自覚がどれほどあるか、それが問われていると思います。

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