1Fはいま

渡辺敦雄

わたなべ あつお | 

(元東芝原発設計者、山梨地方自治研究所)


はじめに

すべては、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震の発生で始まった。日本海溝で生じたマグニチュード9・0の巨大地震による日本史上最大規模の津波が東北地方海岸を襲った。福島第一原子力発電所(以下1F)は地震と津波の結果炉心溶融と爆発事故を生じ、日本各地に人類史上最大最悪規模の放射能被害をもたらした。

未だに事故原因は明確にされず、数万人と推定される避難者は、土地と生業を奪われ、辛く厳しい日々を送っている。福島県住民は、今後数百年も放射線被ばくによる多大な被害を受け続けていくだろう。

本稿では、事故後7年を経た1Fの現状を分析し、本当に収束に向かっているのか、何が問題なのかを論じ、原発の永久停止に向けてのフェーズアウトの方法を探ることを目的とする。

併せて、既に施行された安保法制がもたらすテロや戦争に対し、日本各地のすべての原発の脆弱性を立証し、将来に禍根を残す安保法制の一刻も早い廃棄を提案したい。

 

第1章 1Fの事故後の現状と問題点

1 1Fの現状

原発内部の現状

炉心溶融により爆発した1Fは1~4号機(以下1F1~4)である。現在は、外側から外観を見ると、壁が敷設され、きれいに見えるが、内部の状況は、爆発直後と変わらない。写真1(東電のHP)に事故当時と現在の1F3の外観を示す。

原子炉格納容器内部(以下格納容器)の状況を、図1(東電HP)および写真2(経産省、廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議=第50回=添付資料から)に示す。

格納容器内部の線量率は、1F2の2017年2月の調査で、70?/hである。なお、この計測値の正確な位置は不明だが、当然デブリ近傍に近づけば、線量は距離の2乗に反比例するので桁違いに線量は大きくなる。人間の致死的線量率をはるかに超えているため近づくことは不可能で、実は、ロボットさえ、視覚を担うカメラレンズの積算対放射線量が約100 Gy(ほぼ?と同じ)程度なので、短時間でも作業ができるレベルではない。なお、放射線量は、今後90年かかっても10分の1程度しか低減しないので、格納容器内作業は100年規模で作業が不可能である。当面作業ができるのは、建屋外の整理と、燃料プールにある破損した使用済み燃料の取り出しなど、デブリなどから距離の離れた場所の作業のみである。建屋内の状況は爆発当時のままである。建屋内に人間が立ち入れない放射線環境と、今後の機器などの経年劣化を考慮すると、事故原因の正確な調査はほぼ不可能といえる。

 

汚染水の状況など

2017年6月29日現在で汚染水総貯蔵量は約100万?で、現在でも毎日100~300?増加している。現在貯蔵タンクの総容量の約60%が満杯である。タンクの敷地内設置場所は残量が限られていること、凍土壁を設けたとはいえ今後も大量の汚染水が増加傾向にあり、1000年単位が必要な保管場所の確保が懸念される。セシウムなど放射性物質処理システムが設置されているが、除去不可能なトリチウム含有汚染水は今後半永久的に増加する。貯蔵タンクも100年は健全性を維持できるであろうが、数百年後のことを考慮すると、敷地内や海洋環境への漏洩による汚染が懸念される。

 

福島県の線量率

図2に、福島県が調査した県内の線量マップの2011年と2017年の図を比較して示す。電離放射線障害防止規則第3条第1項第1号に定められている「放射線管理区域」とは3ヶ月あたりの実効線量が合計1・3m?で、これは、約0・6μ?/hに相当する。現在も依然として福島県の人々は放射線管理区域に住んでいることになる。

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