何もできない〝安倍外交〟と憲法に自衛隊を書き込む危険

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半田 滋さん(東京新聞論説兼編集委員)に聞く

 

南北・米朝会談へ急展開

 

――朝鮮半島をめぐって情勢が急展開しています。どのように見ておられますか。

 

半田 国際社会の圧力、兵糧責めが大きく影響しています。とくに中国が本格的に制裁に乗り出したことが大きいでしょう。この2~3月の統計が出ていますが、北朝鮮の中国への輸出は85~90%減っています。これまで北朝鮮への制裁に関して国連で九つの決議がされています。輸出についていえば、食糧品、海産物、石炭など全部停止することを求めていますが、中国はこれを真面目に履行したといえます。最大の輸出相手国である中国との関係がこれでは、まさに死活問題です。

ですから、このままでは国が成り立たないという判断があったのだろうと思います。そういう時期に平昌オリンピックが重なり、南北首脳会談がセットされたといえます。

もともと北朝鮮の核・ミサイル開発は、アメリカの攻撃を受けないための抑止力として進めてきました。昨年夏、北朝鮮はICBMをほぼ完成し、核についてもTNT火薬にして150トン以上の爆発力を持つものを手にすることが出来たとしています。ICBMはまだ2段式ロケットで、アメリカやロシア、中国が持っている3段式にくらべて弾頭部分が小さく、力もそれほどのものを乗せられないのですが、それにしてもICBMのようなものは持ったわけです。長年、目標としてきたアメリカと対等の立場で議論できる核・ミサイルをもったことによって、アメリカと平和協定を結ぶ環境が整ったとみたのでしょう。

この点がもう一つの背景にあると思います。

 

――南北会談はテレビ放映もされて、金正恩氏が北朝鮮最高指導者としてはじめて南北の境界線を越えるという歴史的な瞬間を、世界中の人が目の当たりにしました。

 

半田 世界同時中継されることは金正恩氏も承知のことだったでしょうから、おそらく計画的な行動だったでしょうね。幅50センチの軍事境界線の縁石を越えて韓国側に入った金正恩氏に、文在寅韓国大統領が「私はいつ越えていけるでしょうか」と問うと、「いま越えましょう」と金正恩氏が文さんの手を取って北朝鮮側に入る……みごとな演出だったと思います。

文さんは、知られているように盧武"鉉","ヒョン">大統領の秘書室長で、民主化を進めた中心の一人ですし、下野したのちは市民運動家、弁護士としても活躍してきました。韓国の民主化、南北統一を望む優秀な政治家ですね。

昨日の第7回日中韓サミットを見ても、安倍首相は終始、プロンプターの文書を見ながら読むのに対して、李克強中国国務院総理はたまに手許のメモを見る、文さんは一度も見ないで話していました。演説内容が頭に入っているのでしょうね。国会演説などでも自分で言葉を紡いで原稿をつくるといわれていますから、そういう真摯さはあの場面からもうかがえました。朴槿恵前大統領ではこういうわけにはいかなかったでしょうね。まず北朝鮮が信頼を置きませんから。

時の利、地の利、人の利とよくいわれますが、そういうものがうまく重なったといえるのではないでしょうか。

 

――「板門店宣言」はどう考えられますか。これまでと同じだという意見もありますが。

 

半田 大きく三つの内容ですね。一つ目が南北統一の問題。6項目あります。二つ目に朝鮮半島の軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を解消するために共同で努力していく問題。3項目あります。三つめに朝鮮半島の平和構築の問題。休戦状態の終息と朝鮮半島の非核化など4項目にわたっています。

このうち南北両国でやれるのは1と2の南北統一と緊張緩和で、かなり具体的なことがうたわれています。統一への当局者間協議や民間交流、離散家族の問題や鉄道のことなどかなり詳細に述べていますし、地上でも空中でも軍事的衝突を避けるためにおたがいに努力し、将官級の会談を持つなど、積極的な内容になっています。ただ、3番目の問題は南北で話し合うだけでは解決しない問題です。北朝鮮が恐れているのは、アメリカによる核攻撃ですから、これは米朝間で話し合う以外に解決しないことです。その点は、多く指摘されているようにあいまいです。トランプ氏に花を持たせようとしたかどうかは分かりませんが、当事者抜きに解決できないことですから、それはやむを得ないでしょう。宣言は、そのことを理解したうえで朝鮮半島の緊張を高めないためにおたがいが努力することを約束しているわけです。

よく、2000年や2006年と同じじゃないか、約束しても北朝鮮は真面目に取り組もうとしなかった、という人がいます。しかし私は、これまでと環境が違っていると思います。もちろん、約束を破ったのは北朝鮮の側だけではないのですが、それはともかく、今回は北朝鮮の指導者が短い時間でも南の韓国へ足を踏み入れました。史上初めてで、これは、北朝鮮のなかで金委員長が絶対的な力を持っていないと出来ないことです。とくに軍の統括が完全に出来ている、自分が南へ行っても軍事クーデターなど絶対に起きないという確信があってのことでしょう。金日成氏も金正日氏もそうだったでしょうが、金正恩氏はまだ30代の若者です。それがそこまでの力を持ったということですね。

 

〝北朝鮮=悪〟の図式の無残

 

――安倍政権と日本のメディアの一部がそうですが、朝鮮半島の非核化を北朝鮮の非核化という人がいます。

 

半田 それは違います。朝鮮半島で核を使わない、使わせないというのは、北朝鮮がいま持っている20発ともいわれる核爆弾だけでなく、在韓米軍はもちろん米本国や日本、グアムなどの米軍基地から持ち込むものを含めてのことです。

核については北朝鮮にトラウマがあります。朝鮮戦争の時に米軍司令官のマッカーサー元帥が使用をちらつかせたことがあり、これが北朝鮮の核保有の原点にもなっています。自分の国で核兵器が使われる危険があることから、自分たちも持とうとなったわけです。

北朝鮮は、石炭は採れるものの質が悪く発電に向かないという問題があります。それで水力発電を盛んにしたのですが、絶対的な電力量がたりない。金日成氏はそれを、ソ連の後ろだてを得て、原発でまかないつつ濃縮ウランを核兵器に利用する二正面作戦でやろうとし、金正日氏も正恩氏もそれを引き継いでいます。

6月12日に米朝会談が予定されています。どうなるかは分かりませんが、北朝鮮の核開発の停止・廃棄と朝鮮半島の非核化、そして北朝鮮の体制を保障する形での平和協定の締結という形になっていくのではないでしょうか。アメリカは、本国に届くような核と核ミサイルの保有は認めませんから、段階的にか、ただちにかはともかく、それをなくすことが目標であることは譲らないでしょう。

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